8.4 授業のノートをどう取るべきか?カラーペンは意味があるか?

更新日 2021年5月15日


初学者は分からなくても黒板を写す

もし授業についていくのが精一杯という状況だったとしたら、とにかく黒板をそのまま書き写すのをオススメします。

聞いているだけでは理解できなかったことが、書いている内に理解できることもあります。

また一度書いたことがあると、その場では理解できなくても記憶のどこかに残っていて、後々に学習したときに思い出せることがあります。


もちろん授業内容が理解できることが理想ではありますが、もし授業内容が理解できなくても「ただながめているよりは書いた方が何倍もいい」ということです。




中級者は自分の言葉で短くまとめる

授業の内容が理解できている中級者はただ黒板を写すのではなく、授業のまとめを自分の言葉で1行、2行書き足すと効果的です。


東大合格者の何人かはこれを合格の秘訣として挙げてくれました。

合格の秘訣をいうと、ノートの上の余白に、「要はXX」みたいに自分の言葉でまとめた。それで理解が深まった気がする

東大理科Ⅰ類K.Tさん


読むだけでは分かったつもりでも頭に入ってないことが多い。自分なりに一言にまとめて発することで理解できるようになる

東大理科Ⅰ類K.Yさん




また学力日本一になった、秋田県東成瀬村の小学校でも、授業の最後に自分の言葉で学んだことをまとめる時間を取っているそうです。


「今日学んだことはなんだったか?」と聞かれたときの答えを書くような意識です。

自分の言葉でまとめることには以下のメリットがあります。
  • 学んだことを自然と振り返れる。
  • 自分の言葉にするので印象に残りやすい。
  • ポイントにまとめることで記憶に残りやすい(抽象化)


また後からノートを見返すときも、全部を見直すのは大変ですが、まとめた内容だけを見直すのなら一瞬でできます。




上級者はノートを取らないもアリ(ノートを取らない人の方が合格率は高い?)

上智MARCH、関関同立、早慶、旧帝一工を受験した人の『学校の授業のノートの取り方』と『合否』を整理してみました。



わずかな差ではありますが、実はノートを取らない人の方が、合格率が高かったです。

(ただしノートを取る人の絶対数が多いので、合格者の絶対数としてはノートを取る人が多いことに注意してください)


私の東大の友人もノートを取らない人が多かったです。

なぜ学校の授業のノートを取らなかったかを聞くと以下のように答えてくれました。

黒板丸写しより、ポイントだけを教科書に書き足す方が、授業に集中できるから

東大理科Ⅰ類S.Sさん


教科書以上にポイントをうまくまとめている授業なんてほとんどないから

東大文科Ⅰ類T.Tさん


問題を解きながら覚えた方が早いから

東大理科Ⅱ類T.M.さん



大事なポイントに集中するために参考書/教科書に書き足す派と、そもそも授業を無視して内職する派がいるようです。

効率を最大限追及しようと思ったときに、黒板をノートに写すという作業が非効率に見えてきてしまうのかもしれません。


とはいえ絶対数としては授業のノートを取って合格した人も多いですし、「授業のノートをとらない」「内職をする」というのは、大事なポイントを自分で見極められて、自己管理ができている人だけにした方がいいとは思います。

特に初学者は安易に「ノートを取らない勉強法」を採用しないよう気を付けてください。




ノートは汚くてもOK
(ノートが汚い人の方が合格率は高い?)

難関大に合格する人はノートがきれい、と思っていませんか?

アンケートによると実は第一志望に合格した人は、不合格だった人よりもノートが汚い人が多かったです。


※899人に実施した問題集アンケートとは別のアンケートです。

私の実体験としても東大の友人には信じられないほどノートが汚い人はかなり多いです。


誤解しないでほしいのですが、あえて汚く書く必要はありません。

ノートをきれいに書くことに時間を使うなら、汚くても速い方がいい、その分だけ一問でも多くの問題を解いた方がいい、ということです。

ノートはかなり汚かった。覚えるために書いているので見返すことはほぼない。きれいに書くのに時間を掛けるのは意味ない

東大理科Ⅱ類Y.T.さん




なお、字は汚いながら、できる人のノートはただメモしてあるのではなく『流れ』『因果』といった構造が整理されていることが多いように思います。

例えば歴史で言えば大きな流れと、細かい出来事を分けて書くとか、数学で言えば、解法の着眼点と、解答の流れを分けて書く、などです。

こうした構造を意識したノートの書き方をすると、情報が整理され頭に残りやすくなります。




カラーペンは無闇に使ってはだめ

勉強にカラーペンを使う人も多いと思います。

ですが、少し考えてみてください。


カラーペンで線を引くのは重要なところですよね?

ですが、そもそも重要なところはどうやって探していますか?

「豊臣秀吉」は重要ですが、有名すぎて共通テストなどで「豊臣秀吉」が解答になる問題はほとんど出ません。

するとちょっとマイナーな事項が重要に見えてきてしまいます。そうしていくと結局、全てに線を引く、なんてことになりませんか?



カラーペンに関する論文をいくつか調べてみました。

論文ごとに主張が違いますが、まとめると、大事なところをちゃんと見極められる人が、限られた量の線を引くなら効果はある、ということと思います。

逆に闇雲にカラーペンを使うと逆効果になる恐れがある、ということと思います。


Robert Fowlerの論文

  • カラーペンを使っても得点は上がらない

Western Illinois大学の実験
  • 直後のテストではカラーペンを使わない人の方が点が高かった
  • 一ヶ月後のテストではカラーペンを使った人の方が点が高かった。

Covenant大学の実験
  • カラーペンを使う人の方が、使わない人より点が高かった
  • カラーペンを使う人の中で、線を引く箇所が少ない人の方がより点がやや高く、線をたくさん引く人の点はやや低い
  • カラーペンを使う人の中で、事前に「カラーペンが有効だと思っていた人」の点は低く、「カラーペンは有効ではないと思っていた人」の点は高かった




東大の英語の過去問で「カラーペンがいかに学習をダメにしているか」というテーマの英文が出題されたことがあります。

『カラーペンで要点をマークするというのは無害なようで、実は消極的な読書の方法を助長する。鉛筆やペンは行間にメモを取る事にも使うのが普通であり、その過程で読者の文章への関わりが非常に強くなるが、カラーペンはこの用途には役に立たない。』


上記の文ではカラーペンの代わりに「メモを取ること」がオススメされています。

東大生も以下のようにオススメしてくれました。
  • 『教科書/参考書に、先生の話で印象に残ったことをひたすら書き足す』
  • 『問題集を解いていて間違えたとき、教科書/参考書に戻って、忘れていた知識のところに、メモを書き足す』


カラーペンで線を引くのではなく、鉛筆かシャープペンで情報を書き足すことを強くオススメします。

書き足すのは例えば先生の小話、解法のコツ、理由、自分が疑問に思ったこと、問題集を解いていて自分が間違えたこと、などです。


歴史であれば「なぜ?」に注目して、なぜその人が出世したのか、なぜその戦争が起こったのか、なぜその政策が実施されたのか、などを書き足すのもオススメです。

数学であれば、公式を求める過程を自分でなぞってみるとか、何かの問題集を解いていて忘れていた公式の箇所に「5月15日に間違えた公式」などとメモするのもアリです。


線を引くのには頭を使いませんが、メモを書き足すには頭を使うので、記憶の定着にも役に立ちます。

さらにメモを書き足していくと、メモ量が多いところは、何度も出てくる重要な語句、または何度も間違えたところのはずで、自分にとって重要なところは自然に浮かび上がります。

テスト前にこれを見直せば、効率的に重要な事項、自分が苦手なところを復習できます。



本コラムのまとめ

初学者は分からなくても黒板を写す
・書くことで理解できることもある

中級者は自分の言葉で短くまとめる
・短くまとめると理解度が倍増する

上級者はノートを取らないもアリ
・教科書/参考書にポイントだけを書き足す

ノートは汚くてもOK
・きれいでも汚くても覚える効果に差はない

カラーペンを使うより、鉛筆/シャープペンでメモを書き足すのがオススメ
・カラーペンは重要な内容を選別できない人が使うと逆効果の恐れもある